ニュージーランド編 〜大自然のはちみつ〜

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オーストラリアの南に位置するタスマニア島に、香り高く世界中のグルメが褒め称えるはちみつがあるといいます。
そこは世界一空気がきれいで、世界遺産にも登録されている美しい自然や原生林に囲まれた島。
タスマニア独自の動植物の生息する楽園には、樹齢千年を超えても尚花を咲かせ続けるというレザーウッドの樹が生存しています。
その花から採れたはちみつを目指し、赤道を超え、大自然の島タスマニアへ行ってきました。
タスマニアについて
公式名:オーストラリア連邦 タスマニア州
公用語:英語
人口:47万人
州都:ホバート
面積:68,331Km2

オーストラリアの6つの州都のひとつがタスマニア州で、本土の南東に位置する小さな島。タスマニアの原生地域は世界遺産に登録されており、ワラビー、カンガルー、タスマニアデビルなどの野生の動物が暮らす自然の多いオーストラリアの中でもさらに独特の生態系の残る島です。水産物・農産物・チーズ・ワインなど特産物も多く、自然に恵まれた土地です。
旅の始まり
ホバート空港に到着し、飛行機から降り立つと、小雨が降り1月だというのにかなり肌寒い。(タスマニア島は南半球にあるので1月は真夏に当たります。)
建築家であり、養蜂家でもあるカール・ミチェック氏とホバートの空港で待ち合わせをしています。第一印象のミチェックさんは物静かでとてもシャイな人物。レンタカーを借りて早速レザーウッドの採蜜地へ向かいます。
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ミチェックさん登場
レザーウッドの採蜜地を求めて
ホバートから北に約3時間のピクトン山の中にミチェックさんは巣箱を置いています。そこを目指してレンタカーでいざ出発。山道の途中、ティーツリーの花が咲き乱れ、さらに進むと私たちが求めているレザーウッドの樹を発見。白く小さな花が咲き、花粉はピンク色で樹の下に行くと、甘く芳しい香りが充満しています。この花から採れる蜜とは一体…と期待は膨らむばかりです。

<レザーウッドについて> タスマニアの西部の雨林地帯にしか生息しない樹で、平均10~15mで白くかわいらしい花を咲かせます。香りがすばらしく、樹齢100年くらいから花を咲かせ、採蜜できるようになる非常に珍しい樹。樹齢1000年以上のものもあります。その花から採れるはちみつはエレガントで香りもよく、後を引く複雑な味わいです。レザーウッドの生息地はまったく公害のない野生の自然の中にあるのでとても貴重なはちみつです。
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ミチェックさんとレザーウッド image
レザーウッドの花。とても可憐なお花。
災難と虹と星空
さらに車に乗って山道を進んでいたところ、ガタン!と大きな音が聞こえました。オフロードのでこぼこ道だったので運悪く大きな石に引っかかり、ガソリンタンクに穴が開いたのです。もう走ることはできません。しかも私たちは山の中。救助を呼ぼうにも携帯電話はつながりません。初日からトラブル発生です。
とにかく巣箱まであと少しだからということで皆で歩いて山を登りました。巣箱に到着すると雨がちょうど止んだところに何と、二重の虹がかかっていました。タスマニアの山奥のレザーウッドの森から大きな空にかけて七色の虹がくっきりと浮かび上がっていました。そして巣箱から採れたてのレザーウッドの蜜の味は、力強い花の香りとまろやかな甘味で、今まで食べたことのない味でした。先程の災難も忘れてしまうくらいでした。
既に日は沈みかけており、再び雨が降り始め震えるくらい寒くて、私たちは半べそで2時間もひたすら早足で山を下りました。偶然にも途中のキャンプ場でキャンプをしているカップルを発見し、状況を説明してタフネ村の施設に連れて行ってもらい、何とか遭難はせずにすみました。
そんな状況の中でも山道で見た星空は素晴らしく美しく、皆で足を止めて見入ってしまいました。タスマニアの大自然の澄み切った空気の中で南十字星も見ることができました。
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ミチェックさんの巣箱。黄色と白の巣箱が印象的。 image
森から大空にかけて二重に掛かる虹。
東海岸をひた走る
次の日、ミチェックさんにウェリントン山を案内していただきました。山頂にはまだ雪が残り、そこから見た景色は素晴らしく、ホバートの街、タスマニアの景観を一望できました。そのままミチェック氏の自宅兼はちみつ工場を訪問するため、ホバートからセント・メアリーという街まで東海岸沿いを車でひた走ります。東岸は乾燥した平原で、全体的に茶色っぽいイメージ。海は波がなく、とても静かでした。
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羊はやはり多いです。皆不思議そうにこちらを見ています。
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東岸の乾燥した地域。
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チェインオブラグーンの海岸。何もなくどこまでも続く海岸線。

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マウント・ウェリントンから見たホバートの街。
ミチェックさんの家を訪ねる
長いドライブを終え、ミチェックさんのはちみつを製造している施設を見学しにセントメアリーという街へ到着。そのはちみつ工場は小さいながらもきちんと整った設備でした。そこで改めてレザーウッドのはちみつを試食。
その施設に隣接して奥様と営む自然食品店があります。とてもシンプルな店づくりで、ミチェックさんの採ったはちみつや、はちみつを使った石鹸なども売っています。そのお店からさらに山道を奥に入ると、ご自分で作られたという家がぽつんと建っています。自然を愛するミチェックさんらしい自然に囲まれた生活が垣間見れました。
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ミチェックさんの商う自然食品店。
ジュリアンさんの養蜂場へ
次の養蜂家に合うためにホバートから北に約150kmのところにあるパースの町へ。出迎えてくれた養蜂家、ジュリアンさんは大柄でがっちりとした、そして温かみのある方でした。ジュリアンさんは現在タスマニアの養蜂協会の会長を務めています。
彼の営む会社の近くにクリスマスブッシュの採蜜地があるということで、早速そこへ向かいます。オーストラリアでは12月に白い花を咲かせ、クリスマス頃になると花びらの落ちた後の「がく」が赤く色づくことからクリスマスブッシュと呼ばれるようになったそうです。
採蜜地の近くでは白くて小さな花を枝先に付けたクリスマスブッシュを見ることができました。巣箱の周りでは、みつばちがぶんぶんと元気よく飛んでいて、あまりの多さに車から降りることさえためらわれました。
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クリスマスブッシュの花。 image
とにかくすごい数の蜂が飛んでいました。
世界遺産の森
次にクレイドル山の国立公園へ向かいます。この国立公園はWTOから「世界一空気がきれいな地域」という認定を受けています。タスマニアの大部分は多雨林の森に覆われ、世界遺産に登録されており、国立公園がいくつも点在しています。この公園は大変大きく、同じ公園であっても乾燥している地域から、ジャングルのような草木が生い茂った地域まで様々な自然が含まれています。そこにはレザーウッドの樹ももちろん生息しています。中でも既に枯れて死んでいる樹が、何十年もそのまま白い幹で大きく残っているのが印象的でした。
タスマニアの気候は東西南北で非常に違います。乾燥して植物があまり育たない東岸では良いはちみつがあまり採れないそうです。比較的南の山中で採れたはちみつは、西岸のものとでは同じレザーウッドでも違いが見られます。西岸に行くと湿った土地で原生林が生い茂る熱帯のような植物体系です。
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ジュリアンさんとレザーウッドの花。 image
枯れて何十年もそのまま残っている幹。
養蜂家の想い
翌日、ジュリアンさんの工場を見学。とても大きな施設でした。現在タスマニアの養蜂協会の会長を務めているジュリアンさんは、タスマニアの自然を愛し、養蜂という仕事に大変誇りを持っている方でした。そして、ここで採れるはちみつの素晴らしさをより多くの人に伝えていきたいとおっしゃっていました。
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みつばちに頬摺りをするジュリアンさん。みつばちへの愛情が感じられます。
ペンギン村
パースの町からさらに北上したところにあるデボンポートから次の目的地ウィンヤードに向かう途中、「ペンギン」という町があります。実際この近辺の浜辺には野生のペンギンが生息しています。
見に行ってみると、巣の近くではまだ産毛が生えている子供ペンギンが親ペンギンの帰りを今か今かと待っているようでした。岩場には沖から引き上げてきた親ペンギンの姿が見えました。野生のペンギンを普通に見ることができるなんて、タスマニア島の自然はやはり只者ではなかった!
人間の踏み込んでいない野生ペンギンの生息する場では、シャッター音やフラッシュでペンギンたちを驚かせてはいけないため、写真は禁止となっていました。自然への配慮が徹底されています。
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「ペンギン注意!」の標識
ブッシュウォーキング
最終日、私たちは西岸の自然を見るために島の北西部のアーサーリバー近くにある原生林に足を運びました。うっそうとした原生林が茂る中、道なき道を進んでいきました。ここにはレザーウッドの森があります。
シダが生い茂り、小さなせせらぎが流れる森の中をどんどん進むと、樹齢千年を超えても尚花を咲かせるレザーウッドの樹がありました。幹は太く大きく、樹の天辺は見えません。小さな白い花を咲かせ、ずっしりと歴史を刻んできた姿には本当に感動を覚えました。そして幻のような光景の中、花の甘い香りに包まれます。日本からはるばるこれを求めてやってきたのだなあとしみじみ感じました。
タスマニアの食事情
タスマニアにはたくさんの特産物があります。代表的なものはシーフード。牡蠣、帆立をはじめ、ここでしか食べることのできないクレイフィッシュは絶品です。クレイフィッシュはエビの一種で、かなり大きくボリュームがあり、見た目はロブスターのよう。身は甘く、プリプリしていて食べごたえのあるものでした。自然がたくさんあるところは食べ物がおいしい!
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クレイフィッシュのタルタルソースがけ。
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魚介のクリームスープ。
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惜しみなくサーモンがのったピザ。何と贅沢なのでしょう!

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樹齢千年といわれているレザーウッドの樹。 image
シダやツタが絡まり、まさにジャングル。
旅を終えて
約100年もの時を経て採れる幻の蜜、レザーウッドのはちみつ。そのはちみつを求めてはるばるタスマニア島までやってきました。
今回の旅では最初から最後まで、時間と自然のスケールの大きさに圧倒されっぱなしでした。世界遺産となっている国立自然公園を始めとして、人間の手付かずの大自然が島のほとんどを占めています。そんな豊かな自然の中でつくられたはちみつは、タスマニア島を象徴する食べ物といっても過言ではありません。
そしてそのはちみつには、タスマニアの大自然とみつばちを愛する養蜂家達の想いが込められています。その気持をたくさんの人に伝えるため、私たちが引き継いでいかなければと強く思いました。
タスマニアのはちみつはこちら