2003年1月、私達は南半球にある島国ニュージーランドへ大自然のはちみつを求めて買い付けに行ってきました。
あの壮大な自然の中で採れるはちみつとは如何なるものか…
特に注目すべきはマヌカのはちみつ。
ニュージーランドの原住民マオリ族は、昔からマヌカを民間療法として日々の生活の中に取り入れてきました。
その花の蜜から濃厚でスパイシーなマヌカハニーが採れるのです。
今までにない、さらなる美味しいはちみつを目指していざニュージーランドへ!
ニュージーランドの国について
人口:380万人
首都:ウェリントン
民族:ヨーロッパ系75% マオリ系15% ポリネシア系5%
面積:27万km2(日本の3/4)
南北の長さ:1,600km
東京の人口よりも少ないニュージーランドですが、羊と牛の数はその人口をはるかに上回っています。産業は酪農、パルプ、羊毛、畜産が中心です。自然に恵まれ、色に例えると水色、青草っぽい国です。
オークランドの街
長時間のフライトを終え、オークランド空港に到着。オークランド市内は大都市であるにも関わらず、高層ビルがなく人口密度が低いことも加わって、とにかく見晴らしが良い印象を受けました。1月はニュージーランドの真夏に当たる季節。真夏といえども、ニュージーランドの季節はとても不安定で暑いと思ったら急に寒くなったり、雨が降ったり止んだりと1日の中に四季がある感じです。
ワイへキ島
まずはオークランドから船に乗って、10km離れた島、ワイヘキ島へ。人口6,000人の小さな島で、景色が素晴らしくとても住みやすいところです。プフツカワという花のはちみつを採っているネイルコワイフさんという養蜂家を訪ねました。プフツカワの花はニュージーランドに生息する花で、ずんぐりむっくりとした木に咲く直径が20cmもある赤いふわふわとした花です。現地ではクリスマスの花として親しまれています。
プフツカワは島の水際に多く生息しています。その花から採れたはちみつは海の近くで育っているせいか後味がしょっぱいのです。不思議な味でした。色はキャラメル色で、コクのある深い味わい。今回は仕入れることができませんでしたが、次回にはぜひ仕入れたい一品です。

ワイヘキ島の景色

プフツカワの赤い花
北島ダーガビルのウィンダストさんを訪ねて
次の日オークランドへ戻り、車で北へ5時間のダーガビルという町へ。北に行くに連れ、牧草地帯からだんだんと南国のトロピカルな風景に変わっていきました。途中の道には放し飼いの牛や羊が群れを成し、のんびりと草を食んでいました。
ダーガビルにはウィンダストさんが営む養蜂場があります。ウィンダストさんはトワイという花のはちみつを採っています。このはちみつは煮たりんごのようなフルーティな香りとラム酒が入ったかのようなエレガントな香りをあわせ持っています。

白くてふさふさしたトワイの花

養蜂家ウィンダストさん夫妻。とても仲睦まじいお二人でした。

永遠に続きそうなクローバー畑に設置されたカラフルな巣箱。巣箱の置き方にもこだわりが見られます。

羊がたわむれるのどかな牧草地帯

シダや背の高い木々が生い茂るトロピカルな景色
カウリの森
ウィンダストさんに連れられて、「カウリの森国立公園」へ。湿地帯やマングローブ地帯を貫いてニュージーランドで一番の大木を育む森にたどり着きました。森には樹齢二千年の巨木が立ちはだかり、巨大シダが生い茂り、今にも恐竜が現れそうな深い森。
ニュージーランドは数百万年をかけて大陸が孤立し、進化を遂げて独自の生態系を持つようになりました。その80%はニュージーランドにしか生息しない植物と言われています。
この森にはニュージーランドで一番大きな南洋スギが生息しています。直径約10m、樹齢二千年。マホガニーのようにとても質のよい樹で、この樹からはハニーディッパーが作られています。
昔はこのくらい大きな樹がもっとたくさん生い茂っていたそうですが、ここ近年の森林伐採により、数が少なくなってるそうです。

カウリの森の長老、南洋スギ
北島ロトルアのディーンさんを訪ねて
次に訪れたのは同じ北島のロトルアで養蜂を営んでいるディーンさんの養蜂場です。ディーンさんは陽気で明るくとてもチャーミングな人物。いつも半ズボンにはだしで庭を歩く元気いっぱいのおじいさんです。いつも冗談ばかり言っているディーンさんと対照的なしっかり者の奥さんと仲良く仕事をしています。
ディーンさんが採っているのはマヌカやブラックベリー、カマヒ、タワリやレワレワなど草原に咲く花々のはちみつです。カマヒはピンク色のフサフサした花で、その花のようにやわらかい味で、日本人が好みそうなはちみつでした。タワリは白い花で、はちみつの色も白くてクリーミーで、カマヒ同様やわらかい味でした。レワレワのはちみつはニュージーランドではとても有名なはちみつで料理にもよく使われるそうです。

ディーンさんの家のポスト。タイヤのホイールが目印

ディーンさんの養蜂場を見学。巣箱から巣枠を取り出していざテイスティング

陽気なディーンさんと我社の社長。みつばちを愛する者同士、話に花が咲き、意気投合。

いつも裸足で元気なディーンさん
ポリネーション
ニュージーランドのほとんどの養蜂家達は、はちみつを採るだけではなく、ポリネーション(交配)のためにキウイ畑のような果樹園などにみつばちを貸し出して生計を立てているのだそうです。みつばちが花から花へ飛び回り、受粉をしてくれるのです。養蜂家にとってみつばちは大事な収入の糧です。
クライストチャーチ
トロピカルな雰囲気のある北島を後にして、南島に向かいました。最初に到着したのはクライストチャーチといわれる街。街中を路面電車が走っていて、イギリスのような街の風景でした。
ハンマースプリングスのスコットさんを訪ねて
南島の大部分は牧草地帯で酪農が盛んです。どこへ行っても羊と牛が放牧されています。
最初の目的地、ハンマースプリングスに向かう途中に車で通った国道7号線の景色が素晴らしく、山と草原に囲まれた大自然の中を風を切って走ることの気持ち良いこと!
気候は北島のようなトロピカルな雰囲気はなく、夏でも肌寒いくらいです。ハンマースプリングスで訪れた養蜂家スコットさんは14歳のときに養蜂を始めました。養蜂へのこだわりと情熱を強く持った人物です。

どこへ行っても牛と羊だらけです

国道7号線の車から見た景色。とにかく眺めは素晴らしい。

スコットさん。養蜂家の手はいつもみつばちに刺されているせいか、とても大きく厚みがあります。

街を走る路面電車

クライストチャーチ
マヌカを求めて
マヌカのはちみつの採れる山を案内してもらいました。山道をどんどん上っていくと、そこには白くて丸い花を咲かせたマヌカの木と、マヌカにとてもよく似たカヌカという木の花が咲き乱れ、花の甘い香りを放っていました。
近くに備えられたカラフルな巣箱が何段にも重なっていて、たっぷりとはちみつが採れるということが伺えました。
次にクローバーとハーブ畑を訪ねました。クローバーの花とブルーボリジというハーブの青い小さな花がかわいらしく咲いていました。そこで採れるはちみつはとてもやわらかい味です。
帰り道、ブラックビーチというニュージーランド原産の樹を発見。この樹の樹液からは甘露蜜(木の樹液を吸った昆虫が余分な樹液を甘いしずくに変えて体の外に出し、その蜜をみつばちが集めてきてはちみつにしたもの)が採れます。

ブルーボリジの蜜原。とてもかわいらしいお花です。

ホワイトクローバーの花

白くて丸いお花を咲かせているマヌカの花

パステルカラーの色とりどりの巣箱
花粉をこよなく愛する養蜂家
スコットさんは、はちみつだけではなく、花粉にとても強い情熱を持っています。花粉は一粒一粒色も香りも味も違うこと、越冬のための食料としてみつばちが作り出す花粉は全て採ってはいけないこと、品質のよい花粉を採るために日々努力していることなど、花粉のことを話すスコットさんの顔は自信にあふれ、生き生きとしていたことがとても印象的です。

「ほら、これが花粉です!ひと粒ひと粒、色も味も違うんですよ。」

「さあ、ひと粒ずつ食べてみてよ。」

スコットさん、ご自慢の花粉と一緒に満面の笑みを浮かべています。

巣箱から花粉を取り出し、私たちに見せてくれました。
オックスフォードのホーヌさんを訪ねて
この買い付けの旅の最後に訪れたのは南島のオックスフォードにあるホーヌさんの養蜂場。ホーヌさんの家は木々のうっそうとしたところにありました。
近くにはアザミが鮮やかなピンク色の花を咲かせていました。そこではアザミのはちみつも採れるそうです。
ホーヌさんはニュージーランドのオーガニックの認定を受けたはちみつを採っている数少ない養蜂家のひとりです。ホーヌさんのところで採れるマヌカのはちみつはマヌカの蜜の濃度がとても高く、香りも濃さも文句なしで今までにない素晴らしいマヌカに出会うことができました。
ホーヌさんの蜂蜜工房を見学。設備も整っています。巣枠を遠心分離機にかけて蜜を振るい落とします。おいしくて安全なオーガニックのはちみつはこうして丁寧に作られていくのです。

ホーヌさんの手もこんなに大きい!
旅を終えて
今回の買い付けの旅はこれでおしまいです。
未だに手付かずの自然が土地のほとんどを占め、多くの動植物が共存しているニュージーランドの大地。その大自然から生まれるはちみつ。そして自然を愛し、みつばちをこよなく愛する養蜂家達。今回の旅で私達は、はちみつを通して自然の大きさやそこに住む人々の寛大さを肌で感じることができました。これを皆様に少しでもお伝えしていけたらと思っています。