ラベイユのはちみつの出発点でもあるフランス。
ここではラベンダーやローズマリーをはじめ、ラベイユを代表する様々なはちみつが採れます。
今回訪れたのはプロヴァンス地方とブルゴーニュ地方。
太陽・光・空気・石造りの建物・ブドウ畑・オリーブの木・ラベンダー・ひまわり畑・日曜のマルシェ・豊かな食文化…
素晴らしいはちみつが採れるフランスを再び訪ね、そこで織り成すゆったりとした時間を皆様にお届けします。
旅の始まり
プロヴァンスの旅の出発点は演劇祭(7月上旬)で賑わうアヴィニヨン。ローヌ川のほとりに位置し、14世紀の法王朝時代の歴史的建物が数多く残る街です。文化・芸術の香り高いこの街では毎夏、演劇祭が開催され街全体が舞台と化し、とても賑やかになります。私達はレンタカーで地方自然公園に指定されているリュベロン地方へ出発です。
ピーター・メール著「南仏プロヴァンスの12ヶ月」の舞台にもなった小さな村が点在するリュベロン地方。丘の斜面にへばりつくように石造りの建物が連なり、村の中の狭い階段や坂道を上ると、頂上には小さなお城やとても古い教会が待っています。この小さな村々に、バカンスシーズンにはヨーロッパだけでなく世界中から観光客が押し寄せます。

アヴィニヨンの法王朝
ルールマランのマルシェ
そんな小さな村のひとつ“ルールマラン”という小さな村に立ち寄りました。ここは作家アルベール・カミュが晩年を過ごし、シャルロット・ランプリングの映画「スイミングプール」が撮影された村です。とても小さな村ですが、広場ではマルシェが開催されていました。食料品はもちろん、プロヴァンス特産品や衣料品まで揃っています。
マルシェは観光客から買い物カゴを持った地元の人でとても賑わっていました。お店の人との会話を楽しみながらお買い物をする人たちの姿はとても楽しそうです。野菜・果物・ハーブ・チーズなどプロヴァンス食材の豊かさを五感で実感できるのもマルシェの楽しみのひとつです。
ハーブ・オリーブ・チーズはもちろん、はちみつの専門店もあります。ラベンダー、アカシア、「森のはちみつ」や「丘のはちみつ」と名付けられた百花蜜など約10種類がずらりと並んでいます。他にもはちみつのお菓子、蜜蝋製品、石鹸などが売っていました。はちみつはフランス人にとって、とても身近な食材です。はちみつを使用したお菓子、パンデピスやヌガーなどが代表的です。

マルシェのはちみつ専門店。もちろんテイスティングできます!
オーベルジュ ラ・フニエール
ルールマランにある有名なオーベルジュ(レストラン付きの宿のこと)「オーベルジュ・ラ・フニエール」にて、シェフ・マダム レンヌのランチをいただきました。ルールマランのレストランでミシュラン1つ星を獲得した女性シェフの料理は、オリーブオイルを得意としています。前菜からデザートまでオリーブオイルを使った料理は、盛り付けから味付けまで女性ならではの可愛さ、繊細さが感じられる素晴らしい料理です。
そして何より南仏の太陽と空気のもと、オーベルジュという空間で豊かな時間の流れを感じることができました。

花や緑が生い茂るオーベルジュ。
プロヴァンス料理とオリーブオイル
プロヴァンスの太陽の恵みをいっぱい浴びた素材に、とても乾燥した大地で育った力強い香りのハーブ(タイム・ローズマリー・バジル・パセリなど)を風味付けにたっぷり使用するのが特徴です。ぽってりとしたプロヴァンス陶器に色鮮やかな野菜など素材を生かしたお料理とハーブ・ニンニク・オリーブオイルのハーモニーが盛られます。はちみつだけでなく、オリーブオイルも産地・種類・気候・搾取方法などで味が全く違います。用途に合わせてオリーブオイルを使い分けることは、素材を生かすことでもあることをプロヴァンス第一日目に知ることとなりました。

トマトコンカッセ
ラベンダーの都へ
次に、リュベロンの谷に広がるブドウ畑・果樹園・オリーブやラベンダーの畑を抜けて北上し、ソーへ向かいます。ソーのラベンダー畑はラベンダーの紫と緑がパッチワークのようで、自然の色が織り成すとてもすばらしい景観です。
南仏の人々の生活に欠かせないラベンダーは、香りを楽しむアロマテラピーだけでなく化粧品・石鹸などにも使用されます。エッセンシャルオイル抽出のために、早いものでは6月末頃から刈り取られてしまいますが、私たちが訪れた季節はちょうどラベンダーが満開でした。辺り一面に広がるラベンダーの香りに包まれ、身も心も癒されました。花に近づくと、みつばちがブンブンと飛び回っていました。
チョコレート専門店ジョエル・デュラン
オリーブ畑と糸杉の道を抜けると、アルピーユ山脈の渓谷に囲まれた小さな街“サンレミドプロヴァンス”が現れます。
この街で、ショコラティエ(チョコレート職人)のジョエル・デュラン氏のお店を訪問し、お話を伺いました。ブルターニュ出身にも関わらず、南仏に魅了されてプロヴァンスにこだわり、そこの特産品(※)を生かしたチョコレートを30種類ほど展開しています。アルファベットで名付けられたチョコレートの他に、コンフィチュールやチョコレートペーストなども手掛けていて、バリエーション豊かにお店に並んでいました。
※アニス・アーモンドペースト・ラベンダー・ブラックオリーブ・ローズマリー・タイム・プロヴァンス産アーモンド・カマルグ産サフラン等
ジョエル・デュラン氏は、はちみつへの関心も深く、ラベンダーはちみつを使ったチョコレートやコルシカ島の「アルブジエ(イワナシ)はちみつ」を使ったチョコレートもありました。アルブジエはちみつは少し苦味のある個性的な味わいですが、その個性を生かしたブラックチョコレートとの組み合わせは本当に素晴らしいものでした。
最後にジョエル・デュラン氏がお持ちの貴重なはちみつを見せていただきました。コルシカ島の「Miel des Neiges(雪のはちみつ)」(※)です。なんと13年前のはちみつですが、保管する際の温度・湿度に非常に気を配っているそうで、13年経っても品質の問題は全くないそうです。
※Miel des Neiges(雪のはちみつ)…高山で雪解けが始まる頃に採蜜されるため、そう呼ばれています。ロマンチックな名前ですね。春が到来する2月末〜3月のみに採蜜される貴重なはちみつなのです!

お店の外観。日本にも発送しています。

ずらりと並ぶチョコレート。

Miel des Neiges(雪のはちみつ)
力強いハーブのはちみつを求めて
ローヌ川を境にプロヴァンス-アルプ-コートダジュールからラングドック-ルシヨン地域へ入ります。
この地方は“ミストラル”とよばれる北から吹きおろす強烈な風から巣箱を守るために、雑木林や高い木の下に置きます。また巣箱のアリ駆除のために、野生のタイムをしごいて巣箱とフタとの間に入れます。まさに“オーガニック”の虫除けです。蜜が完熟するのを見計らい、居住施設の備わったキャラバン(巣箱用大型トラック)で巣箱を集めに行きます。
<ラングドックールシヨンで採れるはちみつ>
・ガリグはちみつ
「ガリグ」とは南仏独特の石灰質の土地のことです。またそこに生成する潅木林のことをいいます。その環境のもとで採蜜されるはちみつの蜜源は野生のハーブ。大変乾燥した土地に生息する野生の植物は力強く、車で分け入ると踏みつけられたハーブから強い香りが発せられて、車の中まで香りが充満します。あまりに乾燥しているため、人がむやみに入れないよう柵がされ、山火事を事前に防いでいます。
〜豆知識〜
フランスで“ガリゲット”と呼ばれる細長い小さなイチゴは昔、ガリグ産の野生の野いちごだったそうです。現在は栽培されています。
・ローズマリーはちみつ
みつばちが効率よく蜜を集めることができるよう毎年大体同じ場所に巣箱を置きます。蜜源からの距離・日当たり・風雨などを避けられる場所・まわりの花や植物などが目安となります。周りに松の木が多いとローズマリーは蜜をふきやすいといわれています。ローズマリーのはちみつは丘に囲まれた盆地のような場所で採蜜されます。

これがガリグ。野生のハーブが生息しています。

野生のローズマリー。力強さを感じます

ぺルノー夫妻が採蜜している様子。
ブルゴーニュのひまわり畑
プロヴァンスを後にして、ブルゴーニュへ北上します。
「コートドール」と呼ばれるこの地方は、どこまでも金色に輝く麦・菜種・ひまわりの畑でいっぱいです。
<ブルゴーニュで採れるはちみつ>
・ひまわりはちみつ
ブルゴーニュ地方のひまわりは6月中旬頃から咲き始めます。7月中旬から約2週間完熟するのを待ってから採蜜されます。
私たちが訪問した時期がちょうどひまわりが満開で、まるで黄色いじゅうたんのようでした。ここから採れるはちみつが、花粉をたっぷり含んだ、あの黄色いはちみつになるのですね。
・アカシアはちみつ
ディジョンを少し離れて郊外に出ると、ひまわり畑や小麦畑のあいだに避暑地を思わせるアカシアの森が点々としています。ラベイユのフランス産アカシアはちみつの輝く黄金色は、まさにブルゴーニュ地方コートドールの黄金色です。

まるで黄色いじゅうたんのよう!

緑深く生い茂るアカシアの森。
旅を終えて
アヴィニヨンから始まった旅、短い旅でしたがやはり土地の力“テロワール”を感じずにはいられない旅となりました。みつばちとおいしいはちみつを求めて私たちは、轍なき道を四輪駆動で進みます。プロヴァンスの野生のハーブの香りは非常に力強く、手付かずの自然の素晴らしさとみつばちが共存していることをとても強く感じました。
はちみつだけでなく乾燥した大地のオリーブオイル、マルシェの色鮮やかな野菜や力強い香りのハーブは、プロヴァンス料理には欠かせません。プロヴァンスの太陽の恵みをいっぱい浴びた食材・はちみつを通じてフランス食文化の奥深さを知ることとなりました。
今回のはちみつ紀行で、南仏の雰囲気や時間の流れを少しでも伝えられたらと思います。